第12回 建築文化講演会 レポート

■ 題目: 「子どもはどこで犯罪にあっているか」   
           ‐これからのまち・建物のあり方を考える‐
■ 日時: 平成17年3月4日(金) 16:30〜18:30

■ 場所: 茨城県立図書館 視聴覚ホール

■ 主催:  日本建築学会関東支部茨城支所  
       日本建築家協会   茨城地域会
    共催:  茨城県立図書館  後援:S茨城県建築士会、茨城県建築士事務所協会

■ 講師プロフィール 中村攻(なかむら おさむ)氏  1942年生まれ。 京都大学大学院
    博士課程修了。建築学専攻、工学博士。   現在、千葉大学 園芸学部 緑地・環境
    学科教授(地域計画学担当)      専門は都市計画。公園や緑地、街路などのまちの
    オープンスペースの計画を中心とする造園学の立場から都市計画の在り方を研究。
       この15年は、子どもを犯罪から守るまちづくりの在り方について研究するとともに、
    具体的な活動方針を提案し、 全国各地で各種地域団体や行政とともにその実践に
    努められている。

■主な著書 
     「子どもはどこで犯罪にあっているか」(晶文社)

     「日本型グリーンツーリズム」(都市文化社) 他


■主な作品
    千葉県白子町健康管理センター
    埼玉県川里村 農村センター 他
講演レポート
   
  講演は大人が見落としがちな“子どもの生活の視点”に
  関する話から始まった。  どのような地域にも子どもは生
  活しているという認識が必要である。 中村教授が行った
  東京駅周辺の小学校(子どもの生活空間が貧しい) の
  調査では遊びの発達にみられる年齢差、性差、季節差
  がほとんど ないという調査結果になったそうだ。
   また、高層集合住宅に住む子どもたちの問題点につい
  ても触れた。
  次に、小学生を対象とした“犯罪に巻き込まれる危険に
  遭ったケース”  の実態調査 (都心部では4割前後、農
  村部でも1割前後に上る小学生が危険な目に遭ってい
  る)や、マスメディアでも取り上げられた子どもが犠牲と
  なったいくつかの事件を通して、 犯罪が発生する場所
  の空間的な特徴について述べられた。 
    残念なことに人々の心を和ませる目的であったはずの
  「緑」が、適切な管理がなされていないために犯罪地と
  化してしまう、 地域の人が近寄らない「緑」は危険であ
  ると考えたほうがよいのである。  近年都心部などの狭
  小敷地において採光やプライバシーを考慮した3階建
  て住宅 が多くみられる。  この場合、 1階が駐車場や
  玄関、2階に台所や居間といった日常空間が多いため、
  道路を通る人の気配を感じとることが難しくなっている。
  その結果、 住宅街であっても人の視線の通らない道
  路などは犯罪が起きやすくなる箇所に変化しうるので
  ある。1階に住戸や人気のない集合住宅街についても
  同じことである。

 犯罪に巻き込まれる可能性が高くなった原因としては、
   @学校や公園、道路をはじめとする地域の生活空間
    が、欧米と異なり犯罪が起こることを前提としてつく
    られていないこと、
   A子どもや高齢者にとって関わりの深い存在である
    はずの地域に対し興味がない大人の増加と大人の
    コミュニティの未熟さ、
   B行政や警察が地域住民を中心として考えていない
    こと (近年多くの交番が無人化されてきたことなど
    も)があげられた。

                       


2005-03-10

一つ一つの建物が、まちなみを形成していることを忘れ
がちであるという中村教授の指摘であった。     建物を
建てる際には、建物の役割として 1/3はまちを構成す
る役割、残りの2/3で建物固有の役割を果たす、 いわ
ゆる 「かかわりの建築」 に修復していくことが必要な
のである。  自分の住む建物(内)が安全であっても、
まち(外)は危険である所では暮らしたくないであろう。
最もなことである。
 安全対策の基本は、木の伐採や防犯カメラ、  セキ
ュリティシステムの充実ではなく、人と人とのかかわり
であるといえる。見通しのよいように、たんに 木を伐採
してしまうのではなく、 まちに人があふれている(高齢
者などが外に出ることは犯罪の予防につながる) よう
な地域にすることである。 子どもはその地域に根ざし
て生きている。子どもを安全な環境で育てるためには
大人がもっと地域に根ざすことが大切である。





 建築に携わる者として、これから一層、人と人との
関わりを生み出す建物づくりを行うことが 必要不可
欠であると思った。
一人一人が地域に参加するという意識を持つように
なれば、いつの日にか犯罪は減っていき、  誰にとっ
ても暮らしやすいまちになるであろう。
  講演は建築関係者だけではなく、一般の参加者に
とっても大変有意義な講演であったにちがいない。



    *中村教授は中央公論(平成17年4月号)にも
     執筆されています。

              記: 矢田奈保子 近崎涼子

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